日本政府がIWCから脱退して商業捕鯨を再開する方針を示しました。
反捕鯨国の言い分が理不尽だと以前から憤っていた人達は、今回の脱退を潔い行為だと喜んでいるようです。
また、沿岸捕鯨をしてきた和歌山県の太地町や山口県の下関市では、これで商業捕鯨が再開できると、この決定を歓迎する声が上がっています。
しかし、結論を言えば、このIWC脱退は日本にとって著しく国益を損ねた行為と言えます。
この記事を書いている時点では、まだ表明しただけなので、実際に脱退するかはわかりませんが
こんなことを口にするようでは、日本は相当ヤバい国になってきたなーと実感します。
「捕鯨は文化」の裏には水産庁の天下り利権
捕鯨のことで国際社会から非難されるたびに、日本政府は「捕鯨は文化」と反論しています。
これは恥ずかしいからやめた方がいい。
日本が南氷洋まで大型船を出して捕鯨を始めたのは、太平洋戦争の戦後の食糧難を解決するのが目的でした。
カナダのイヌイットのように、捕鯨で先祖代々生計を立ててきたモノとは違い、高々数十年の歴史しかないものを文化とは呼びません。
捕鯨に対して、多額の税金を維持して無理矢理維持しているのは世界で日本だけです。
捕鯨関連の団体には、水産庁の役人が天下っていて、その構造を維持したいために「文化」という言い訳をしているだけなのです。
脱退で捕鯨頭数は増える?
日本の食文化に干渉する欧米に一矢報いたと喜ぶ人たちは、IWCを脱退すれば自由に捕鯨ができるようになるとでも考えているのでしょうか?
IWCを脱退すると、南氷洋や北大西洋での調査捕鯨ができなくなります。
商業捕鯨は可能になりますが、日本の領海とEEZ(排他的経済水域)だけに限られます。
日本は南氷洋や北大西洋で調査捕鯨の名目で多数のミンククジラを捕獲してきたのです。
日本の近海のみとなると、ミンククジラなどの大型の鯨はあまり生息していないので、一度に大量の捕鯨をすることは困難になるでしょう。
国連海洋法条約では、国際機関に属していないと捕鯨はしてはいけないと定められています。
IWCの科学委員会にはオブザーバーとして残り、海洋資源に関する科学調査の名目で捕鯨を行うというやり方が考えられます。
そうなると、日本は近隣国と捕鯨のための国際機関を作らなければなりませんが、そんなものがすぐにできるのでしょうか。
反日国家の中国や韓国が日本に手を差し伸べるというのも考えづらいことです。
日本以外に国家の政策として捕鯨を行っているノルウェーやアイスランドもIWCには加盟を続けています。
日本は捕鯨において、まさに完全孤立の政策を取ろうとしているのです。
国際司法裁判でボロ負け
2014年3月31日、国際司法裁判所(ICJ)は日本の調査捕鯨を中止すべきという判決を下しました。
当初は、裁判所は判決に従っていた日本政府ですが、1年後には判決を無視する形で調査捕鯨を再開。
国際司法裁判所というのは、あくまで一つの指針を示すだけで強制力はありません。
しかし、日本は軍事力が制限されていて、しかも周辺国と領土の紛争を抱えている国です。
例えばの話、中国がいきなり尖閣諸島を占領したとして日本が国際司法裁判所に提訴した時、世界は日本をどのように見るでしょうか。
「国際司法裁判所の判決に従わない国が困った時だけ泣きついてくるのか、笑わせる」と見られるに決まっています。
捕鯨は日本の文化?
捕鯨は日本の文化だとやたらと振りかざす日本政府ですが、日本が大規模な捕鯨を開始したのは、実は第2次世界大戦後です。
その時は、日本は当然ながら戦争で国土が荒廃し、農業や牧畜をすぐに始めるのは難しい状態でした。
飢えた国民のために南極の海まで船団を組んで出かけ、巨大なクジラを捕獲して、食料を供給するという発想は極めて合理的なことだったのです。
「捕鯨は文化」と呼べるのは、日本の地方で大昔から営まれてきた小規模な捕鯨のことであり、何でもかんでも文化とつければ許されるとでも思っているのでしょうか。
IWCからは南極の海での大規模な捕鯨はやめて、地方の小規模な捕鯨に限定してはどうかと打診されているのですが、日本政府はこれを拒否しています。
オーストラリアと喧嘩してもメリットなし
反捕鯨国の中でも特に日本批判が激しいのがオーストラリアです。
2010年に国際司法裁判所に日本の捕鯨は国際法違反であると提訴しました。
オーストラリア人のクジラに対する思い入れは、一部狂信的なところはたしかにあります。
日本人が理解しないといけないのは、オーストラリア人はクジラのことを犬や猫以上に親しみのある人間の友人と考えているという事実です。
自分の庭先の海域まで日本が巨大船団で出かけてきて、自分たちが可愛いと思っているクジラが大量に殺されていくのを目の当たりにして、感情的になるのは当たり前のことです。
それに加えて、日本は中国の脅威に対抗するためにも、オーストラリアとは仲良くすべきなのです。
捕鯨なんて日本には大した国益は既にないのですから、そんなものはさっさとオーストラリアに譲歩すればいいんです。
すでに価値のないモノと引き換えに、オーストラリアの機嫌を良くして、日本製の潜水艦を買ってもらう。
それが国益を優先した外交というものだと思います。
鯨ってまずいよねはっきり言って
鯨の料理といえば、昔給食に出てきた鯨のカツ、鯨のベーコン、大和煮の缶詰が思い浮かびます。
賛否両論はあるかもしれませんが、はっきり言って美味しい代物とは思えません。
そもそも大和煮というのは癖のある動物の肉の味をごまかすことが目的の味付けです。
大和煮にしないといけないというところ自体美味しくないと言ってるようなもんですよね。
私は食べたことはないですが、鯨の刺身というのは、意外においしいらしいです。
ただ、美味しい鯨を食べるためには、実際問題として、新鮮な鯨が食べられる地元に足を運ばなければなりません。
一般の人が、鶏肉や豚肉のように、流通管理が整えられ、家庭で簡単に美味しく食べられる食材ではない、それがクジラという食材の現実なのです。
鯨食が文化だと反論している人がそんなに多いなら、その人たちは実際にどれだけ鯨を食べているのでしょうか?
市場ではまったく売れずに、冷凍倉庫に莫大な冷凍鯨が積みあがっている現実を無視しているとしか思えません。
戦前の軍部の暴走と似てきた
今回の日本政府のIWC脱退は、南極の海での調査捕鯨の名を借りた商業捕鯨が困難になったので、だったら南極はあきらめて、日本の近海でミンク鯨を捕ってやれという発想なのでしょう。
ノルウェーやアイスランドのように、捕鯨モラトリアムを批准せず、捕鯨している国は確かにありますが、日本は駆け引きに駆け引きを重ねて最後に捨て台詞で脱退した形です。
裁判の結果が気に入らないから、国際組織から脱退するというのはメチャクチャ印象悪いです。
日本国民からは食べ物としてのクジラはすっかりそっぽを向かれ、市場としても存在していないのに、日本政府はなぜか必死に捕鯨を守り続けようと活動しています。
常套手段の誘導尋問的な世論調査で、ほら、日本国民は捕鯨を支持しているのだ、外国には勝手なことを言わせないぞという態度を続けています。
農水省の官僚が自分たちの天下り利権にしがみついているのはよくある日本の風景ですが、それ以外にも右翼的な考えは政治家が捕鯨を自分達の砦として維持しているところがあります。
【日本のIWC脱退について】https://t.co/WALFXYdW9L
この決定によって利益を得る人々はほんの一部です。
彼らの利益のために日本全体が巻き込まれています。
チャート(未完成)を作成しました。
捕鯨のコア:
・水産庁
・(一財) 日本鯨類研究所
・共同船舶株式会社 pic.twitter.com/6rwPTPQSH8— LIB (@Anima_Liberator) 2018年12月20日
捕鯨問題に限らず現在の安部政権になってから、国際的な舞台での日本政府の態度は非常にわるくなっているようです。
太平洋戦争前に国際連盟脱退を脱退した当時の日本に先祖返りしているような・・・そんな危惧を抱きます。
今こそ、軍人が自分たちのメンツや利権のために暴走して、日本国民を地獄の底に突き落とした過去の歴史を思い起こして、「日本の本当の国益は何か?」を考えるときではないでしょうか。
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