シンギュラリティ(技術的特異点)が2045年頃にやってくるのではないか、という説が最近テレビやネットでもよく話題になってます。
シンギュラリティとは大まかに言えば、AI(人工知能)が人間の知能を超えて、さらにコントロール不能なぐらい進化することを指します。
このシンギュラリティ2045年理論は、アメリカの未来学者、レイ・カーツワイルが唱えている仮説です。
「シンギュラリティは必ず来る」、「いや絶対来ない」、という論争が巻き起こっていて、感情的に反対意見の人間を攻撃する人まで出てきています。
でも、シンギュラリティがいつ来るかを考えるのは、不確定要因が多すぎてちょっと不毛な気がするんですよね。
それよりも、シンギュラリティが実現する大前提となる汎用AIの実現を考えた方が有意義じゃないかと思うんです。
だから第一に考えないといけないことは
ということではないかと。
私はAIの専門家でもなんでもありませんが、汎用AIは2020年代後半には完成すると見ています。
と言うのも、汎用 AI を開発できた国は世界の覇権を握ることができ、開発競争に敗れた国は、その覇権を取った国に跪くしかないからです。
現在世界中の国々、特にアメリカや中国などの大国は、国家の存亡をかけて一日も早く汎用 AI 開発せざるをえなくなる状況に追い込まれているのです。
汎用 AI が完成したら何ができるの?
現在存在する AI は特化型 AI と呼ばれ、 「囲碁将棋をする AI」 、「顔を識別する AI 」、「音声を識別する AI 」など、最初に設定された作業以外のことは基本的にできません。
これはAIの分類で言えば、「弱いAI」と呼ばれます。
これに対して、汎用 AI、つまり「強いAI」は、複数の作業を行うことができます。
囲碁や将棋だけでなく、世界中のあらゆるゲームができるし、明日の会議の書類の作成をやっといて、と頼んだらしっかりやってくれます。
これは、専属の秘書を持つのとおなじことです。
この時に不可欠なのが、「言語を理解する能力」ということになります。
これは「自然言語処理能力」と呼ばれるものです。
私たち人間は、日常的に言語を通した思考やコミュニケーションで自分の行動を決めていきます。
しかし、現在の特化型 AI はまだ言語を理解することができません。
汎用 AI が人間と同じように行動するためには 、言語を理解する能力が欠かせないのです。
AI にとって、人間の言語を理解することは、 AI が囲碁で人間の世界チャンピオンに勝つことよりもはるかにハードルが高い行為です。
しかし、もしこの壁を突破すれば、人類は念願の「汎用 AI」 を手に入れたことになります。
汎用AIが科学者となる
汎用 AI が完成したとしても、当初はごく簡単なことしかできないでしょう。
その汎用AIに命令したとしても、まるで3歳児のお使いのように時間がかかったり時には頼んだことを間違って実行したりするかもしれません。
しかしこれはまったく心配する必要はありません。
人間の三歳児が18歳の大学生になるには15年かかりますが、三歳児レベルのAIがそのレベルに達するには、それほどの時間はかからないでしょう。
そのときのコンピュータの処理速度にもよりますが、1か月、または3日程度でそのレベルに達することが予想できます。
AIは人間のように、食事や睡眠のために時間を取る必要はないし、病気で休むこともありません。
1日24時間を、そっくりそのまま自己学習の時間にあてることができてしまいます。
大学生のレベルを超えたAIは、大学院生、博士、とレベルを上げていくことは簡単です。
やがて優秀な科学者となったAIが大量生産されて、それらが不眠不休で研究活動を続けて、人間の科学者では困難な画期的発見をすることでしょう。
AIの科学者は、やがてノーベル賞を受賞します……。
これが、汎用AIは人類史上最強かつ最後の発明と言われる理由です。
蒸気機関の発明は18世紀産業革命を起こしましたが、汎用 AI はそれとは比較にならないレベルのインパクトを人間社会に与えるでしょう。
ここまでの予想を荒唐無稽だと感じた人もいるかもしれませんが、汎用AIさえできてしまえば、これはごく自然に引き起こされるはずです。
汎用AIが科学者レベルになるより、未熟でも一番初期の汎用AIを完成させることの方が、はるかにハードルが高いでしょう。
言語を理解できるAIは早ければ2025年ごろ完成?
ここまで、根拠の乏しい私の願望ばかりじゃないかという人もいそうですね。
そこで、現在進行しているAIの言語理解の研究の一つを紹介してみます。
日本でのAI研究の第一人者と言えば、東大の松尾豊教授です。
この方は、2020年半ばまでに、ディープラーニングという手法でAIの自然言語処理はできるようになると予想しています。
人間の知能というのは2階建てなんです。今までの自然言語処理というのは、1階部分がないのに2階部分を作ろうとしてきた。いま、ディープラーニングによって起こっている変化は、1階部分ができそうということで、これからは1階部分と2階部分を両方備えた意味処理ができるはずなんです。
どういうことかというと、ある文を聞いたときに、それが意味する情景を思い浮かべられる、想像できるということです。これができてくると、僕は言語処理の世界も大きく変わってくると思いますし、社会全体に非常に大きなインパクトを与えられるんじゃないかと思っています。
技術的に難しいところがあるかもしれませんが、早ければ数年のうちに、こういう世界が見え始めるんじゃないかなと思います。技術の転換点に我々はいるということですね。
現在、AIは簡単な文章であれば、その内容を画像に変換することができます。
例えば、「鳥が空を飛んでいる」という文章から、「鳥が空を飛んでいる」画像を生成することができるのです。
考えてみれば、私たちも頭の中で同様の作業をしていますよね。
もちろん、映像化が言語理解のすべてではないですが、AIが人間の脳に近づいているのは間違いないといえるでしょう。
AIの言語理解の研究はまだ初期段階ですが、言語を理解する汎用AIの誕生はある日突然訪れそうな気がしています。
AIが囲碁の世界チャンピオンに勝つのは10年は先だろうと言っていたら、あっという間に追い越してしまいましたからね。
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